投稿

6月, 2021の投稿を表示しています

クマが人里へ出没する理由

イメージ
 6月18日にヒグマが札幌市東区の市街地に出没、計4名を襲ったという事件があった。人にアタックする動画がニュース・SNSで報道されたので、多くの人がこの事件にショックを受けただろう。SNSを見てると、なぜこのような事件が起こったかの原因をあれこれ考察する投稿が相次いでいる。原因解明は大事だが色々な可能性があるので、とりあえずは、出没が起こった時の対応などを市民に普及啓発することが大事だろう。メディアが車でクマを追いかけたりしてたが、あれは絶対にやってはいけない行動だ。 とはいっても、ヒグマが人里に出てくる理由を明らかにすることは、ヒグマと人の共生を考えるうえで最も重要であり、国内外で多くの研究が進められてきた。このポストでは、2014年にスカンジナビアのヒグマ研究者がクマの人里出没のメカニズムについてまとめたレビュー論文の内容に沿って、出没の理由について考えてみる。 Elfström, M., Zedrosser, A., Støen, O. G., & Swenson, J. E. (2014). Ultimate and proximate mechanisms underlying the occurrence of bears close to human settlements: review and management implications.  Mammal Review ,  44 (1), 5-18. この論文ではヒグマの人里出没の内的メカニズム (注) の仮説を4つ挙げている。①人馴れ(Human habiruation hypothesis);②人為的なエサを求めて人里に近づく( food-conditioning hypothesis );③人と接した経験が欠如している人里付近の若いクマが出没する( naivety hypothesis)の3つがあげられている。 (注)ヒグマそのものに注目したメカニズム。里山管理放棄や人の生活圏が森林と近くなった、といった理由はここでは述べていない。 4つ目は、特定の性や齢、繁殖状態(子連れなど?)の個体に偏って出没することを説明する④” despotic distribution hypothesis”というものらしい。 捕食回避や干渉型競争などの結果こういった偏った...