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育休中に考えた研究と仕事、老後のこと

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(男女共同参画推進室 しあわせぶんたん、に掲載された記事を許可を得て転載) (以下原文) 2025年3月から10月にかけて育児休業を取得しました。 現在は復職して育児に加えて授業やゼミ運営に追われる忙しい日々を送っています。 7ヶ月の育休は本当にあっという間でした。想像を絶する育児の大変さや、妻と息子の3人でのんびりと過ごす(注釈:本当は寝不足で倒れていただけですが)幸せな時間を満喫できました。 息子の寝顔(写真参照)や笑顔、泣き顔や変顔でさえ、全てが愛おしくて、育児の疲れを吹き飛ばしてくれます。写真フォルダの容量が一杯になって課金するか悩んでいます。 息子の誕生以来、おむつのメーカー決めや離乳食、保活まで、ありとあらゆることを妻と話し合いながら(時に喧嘩しながら)、手探りで育児を進めています。育休のおかげで、復帰後も2人で意見をぶつけ合いながら育児に励むことができていますし、今後もこの関係が続くでしょう。 育休を通して研究者を引退した老後の不安が一つなくなりました。大学院時代から研究活動が常に生活の中心にあったため、それ以外の活動に専念するのは初めてでした。私は多趣味ですが、趣味の時間も頭の中ではいつも研究のことを考えている、いわゆる仕事人間でした。研究者は仕事人間が多いので、そうした自分に何の疑問も抱かずに生きてきました。育休を取る際、研究ができないストレスでどうにかなってしまうのではないかと心配していましたが、意外にも育児と家事が中心の生活に満足しており、育児と大学業務の板挟みで研究できない現在も幸せに過ごせています。これからの人生の中で研究ができなくなるタイミングは必ず訪れます。定年退職前でも病気や怪我、介護、大学業務の都合などで研究を諦める時が来るかもしれません。そういう時に果たして自分は幸せでいられるか自信がありませんでした。31歳の私にとって時期尚早ですが、育休の経験を通して、研究者を辞めた後も幸せに生きていける確信を持つことができました。この育休期間は、息子の成長を妻と共に見守るかけがえのない思い出になっただけでなく、なぜか老後の不安解消にもつながりました。 保育園に入園したら息子と過ごす時間が減り寂しいですが、研究活動と家庭生活のバランスをとりながら幸せな人生を歩んでいこうと思います。

受賞講演で何を話すか?

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今年度の生態学会で若手奨励賞(鈴木賞)を受賞した。受賞者は大会で記念講演をするのだが、内容は研究自体の話、裏話、キャリアの話、関係ない話など各人で違っていて面白い。 私の受賞講演では研究を始めたパーソナルな経緯や何を考えてきたか、など研究の裏側を話した。講演のシナリオを練る際に、自分のこれまでの研究を1本のストーリーにするとどうなるのかをよく考えてみた。 メモ、最近PCから離れて手書きで研究を考えることが増えた。 余計な情報が入らないのでおすすめ。お気に入りのノートとペンで 上のメモは夜の10分間くらいでスラスラと書いた。これまでの私の研究は「学生サークル→指導教員の気まぐれ→テーマ探し迷走→フィールドで頑張る→論文を頑張る」というパーソナルなストーリーとして綺麗にまとめることができた。改めて私のキャリア初期は研究背景がないことを実感した。式典で読み上げられた受賞理由も「富田氏は****で粘り強く取り組み、***で粘り強く」と自然薯並みの粘りを見せたことが評価されており、講演内容とマッチしていた。自他ともに私の研究はパーソナルストーリーとして語るのが向いているということなのだろう。(最近スマートな研究者ぽいと自惚れてたが、まあ泥臭いんですね。) 受賞講演をどう使うかは、受賞者次第だ。自分の研究を知ってもらいたい・共同研究に発展させたい・就職に向けた演説・聴衆への問いかけなど様々である。いずれにせよ、今回の受賞はこれまでの研究道を振り返る良い機会だったし、定期的に応募していきたい。

育児雑感:父親と母親の表象

夫婦で外を出歩いていると良く「奥さん、大変でしょうけど、赤ちゃん可愛いから頑張ってね〜」と妻が応援される。 一方で、自分が育休中で育児に専念していることを妻が紹介したり私がいうと、「旦那さん、えらいね」「旦那さん、優しいね」と言われる。頑張ってるアピールっぽくなるので、育休中なのは身近な人以外には言わないようにしているが、話の流れ的に言ってしまうと褒められてしまう。その時、妻は「奥さん、ありがたいね、助かるね」と言われる。 しかし、私が育児しているのは偉くも優しくもないことだし、育児が大変なのは妻も私も同様である(出産と産後直後は妻の方が身体的に大変だが)。むしろ、睡眠時間が私より長かった妻の方が夜間授乳を頑張ってるし、3時間おきに20分以上キツい体勢で授乳するのは優しいしエラい👏 さらに、授乳を頑張る妻に対して「ありがたい、助かる」という感謝を常に抱いているが、そういう気持ちにはあまり注目されないようだ。 母親が授乳するのは自然であって、優しさとしては認識されない。優しくないとこんな頻繁に授乳とかできないけど。お母さんになると、母性が自然に生まれ授乳中はオキシトシンが出て幸福感に包まれるという話があるが、オキシトシン=幸福ではないし、母性味も個人差はあるだろう。 この場合、どういった言葉が妥当なのだろうか? 「奥さん、旦那さん、育児は大変だね。赤ちゃん可愛いから頑張ってね〜」「奥さんも旦那さんも大変な育児をして偉いわね。」とか一緒くたに褒められると嬉しいかも。 「授乳頑張っている奥さんに感謝しなさいよ、あなた」とか言われたらもっと嬉しいかも。 まあ、すれ違いの人に自分達を理解してもらおうと思うこと自体が無理で傲慢なので、これは内省なのだけど。 このような無意識のバイアスを感じたことがなかったので、新鮮味があって面白かったのでわざわざ書き起こしてみた。息子が大きくなる頃には我々が👴になっているので、父母像はどうなっているのだろうか?意外と昭和的な「母の表象」が残っているのだろうか?それはそれで興味深いし、考えや価値観の多様性という点で悪いことではないと思う。 ーーーーーーーーーーーー 高齢化著しい高知だと、話しかけてくる人は基本オーバー50、母親ワンオペ時代の方が多いからこうなる。年配はとてもフレンドリー? そして誰も悪気なんてないし、正直我々も労ってもらったり...

育児休暇前半戦を振り返る:育児編

 2025年3月上旬に第一子が誕生し、9月末まで7ヶ月間育休を取得している。前半戦が終わったので、育児や育休について感想をまとめてみる。というかやっと振り返る余裕ができたという。。。 ポストが長くなったため、育児編と研究編2本立てでお送りしま〜す 新生児は鬼大変👹👶 当然育児は初めてであり、生まれてきた赤子をどのように育てていいか分からないことだらけである。特に最初期は大変、首グラグラ・すぐに吐く・情緒が全く不明・授乳中に寝る・3時間ごとに起きない・沐浴etc... 親が不慣れな育児に取り組むことに加え、新生児期特有の不安定さによって、生後4週間(育児開始3週間)は特に大変だった。2人メインで1週間だけ私の父が手伝ってくれたので、ワンオペよりは遥かに楽なはずだが、心身ともに限界に近い状態で1ヶ月を過ごした。 妻とは「うちらの親は家事と育児を1人でこなしてたのか?しかも2人目以降は幼児の面倒もみてたのか??」とワンオペで子育てしてきた自分たちの親が、実は人間やめていたのではないかと、何度も真剣に議論したくらいだ。妻は出産ダメージ(鼻からスイカが出るようなものと例えられるが)により最初の1ヶ月は家事はほとんどできないので、私が授乳のサポートと家事を担当して、妻は授乳に専念する体制だった。 特に夜間の授乳は大変で、3時間おきに母乳とミルクを与える必要があり、しかも赤子👶が起きない!いやお腹空いたら泣いて知らせてよ〜と思うが、赤子というのは生後3週間くらいは自分がまだ子宮にいるつもりらしい。うちのは予定3週間前に生まれたから、余計に子宮モードが強かったかも。 夜の戦いを終えた我々は、日中は死に体(相撲用語)、昼飯は基本インスタント。夜は頑張って何か作ったが記憶がない。母乳成分とか気にしている余裕は全くない。日中はずっとドビュッシーの月の光をリピート再生してぐったりしていた。 授乳のサポートとミルクを担当しており、3時間おきに授乳だが、オムツや寝かしつけなど入れて毎回1時間以上は起きていた。つまり実質2時間以下の睡眠を3時間おきにとっており、夜は断続で合計4時間くらいしか寝れてなかった。 一番こたえたのは、2週間検診で体重増加が悪いからもっと授乳を頑張れと言われたことであり、かなり努力しているつもりだったが、まだやるんか〜と少し絶望した。 赤子が可愛くなかったら...

2023年、2024年に高知県外・国外で出会った魚

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海外や県外の魚の紹介。 和歌山のクジラの内蔵 鯨類食文化がある和歌山のある街で、ウデモノという名前で売られていた。スーパーで写真撮ろうとしたら店員に怒られた。実は愛護団体に攻撃されたことがあるらしく、撮影などは禁止されているようだ。複雑な気持ちになった。写真はアップしないことに。味は美味しい。あっさりしたホルモン。 伊根のブリ 京都の日本海側の観光地の伊根の舟屋の食堂で食べた、めちゃくちゃ美味しかった。冬の日本海側のブリはどこも最高だ。ブランド化している鰤らしいがもっと有名になってほしい。 インドネシア・スマトラで見つけた魚 市場では、回遊魚ぽいのが多かった。ギンガメアジぽいやつや、鰹マグロなど。衛生的に生食は危険だ。期待していた面白い魚は意外と少ない。 マグロ ロウニンあじ? 楽しげな市場の雰囲気。 スマトラの食堂 食堂では川魚が多い。ティラピアやナマズなど。養殖池の様子を見てしまうと、ちょっと怖いが、気にせず食べると美味しい。特にナマズは脂と皮のパリッと加減がウナギぽくて美味しかった。 ナマズフライ。超美味しかった。 ティラぴあのカレー煮込み。 Snapperと書いてあったので、フエダイ? アラスカのスーパー 国際学会で行ったアラスカで売ってた魚は、オヒョウ、タラ、サーモン。レストランでも食えるが高すぎて無理だった。結局アラスカでは魚は全く食べなかった。 知人がドミトリーのグリルでキングサーモンを焼いたらしいが、最高だと言ってた。羨ましい。。。

2023・2024年に高知で食べた魚

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 2023年と比べて24年は魚探訪してないので、2年分まとめて紹介。2022年版は こちら コバンザメ コバンザメは四万十市や土佐清水市の魚屋で時々見た。一度購入したが、滑りがすごく処理しにくい割に味がとても普通。普通の白身フィレのような味で面白くないので、一度だけ購入。 ニザダイ・ウミヒゴイに挟まれたコバンザメ。 ニザダイは美味しかったよ コバンザメを買ったら、まずはこれをやりますよね。 買わなかったけど別種クロコバン? コバンザメ2種が売っている魚屋、すごい。 ヘラヤガラ 土佐清水で購入。 2022年のポスト で紹介したアカヤガラの親戚。少しずんぐりしている。食したにも関わらず、味は不明だ。答えは2枚目の写真にある。小骨が複雑すぎて、ほとんど味を食べれなかったのだ。これはすり身にすればよかったのか?10円で売られていたわけだ。 アカヤガラよりも口が短い、 お腹に黒い点々がある なぜ皮から骨が突き出てくるんだい? クロシビカマス 室戸の有名な魚屋で見つけた、未利用魚。ウケという地域名で売られていた。10匹くらいで200円くらい。以前はイトヒキアジが同じような感じで売っていた。刺身もムニエルもとても美味しい。太刀魚に似ている。黒くて生食は抵抗あるが、上品なので見つけたら刺身で食べてみよう。 小さくも黒銀の光を放つ奴ら ムニエルは美味しい。カマスよりも太刀魚だね。 スギ 土佐清水で購入。この魚はパッと見コバンザメだが、スギ科スギ属の全然違う魚だ。最大1.5mくらいになるそうだが、こいつは50cmくらい。脂のり身質が良いため熱帯や沖縄では養殖されることもあるようだ。確かに脂ノリがよく美味しかった。捌きやすさもポテンシャル高いだろう。見た目のおかげで本州では安く入手できるだろうが、今後市民権を得ていくと高くなるかも。 スギ。小判鮫に似てるが吸盤はない ザケラ(クロサギ) 宿毛の産直市で5尾130円で購入。カイワリなどと同じ扱いの魚。愛南ではバケラと呼ばれるらしいが、こっちではザケラである。刺身と塩焼き、煮付けにしたが、味・食感いずれも良く、値段も考えると日常的に食べていきたい魚である。たくさん売っていたが高知市に流通しないのは、足が早いからなのか?この産直市はミノカサゴが売っていたり未利用魚の宝庫で注目している。 口が窄んでいるが、下に伸びるらしくそれが名前の由来...

2024年に読んで面白かった訳本

 2024年に読んだ訳本のうち、特に面白かったものを紹介。 キツネを飼いならす: 知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語 ロシアで進められてきたキツネの家畜化実験についての物語。シベリアのキツネの家畜化実験は、進化生物学の最も有名な研究だが、その背景はとてもドラマチックだ。この実験は、冷戦化のソビエトで、タイトルにある「知られざる生物学者」ことドミトリ・べリャーエフによって始められた。実験を開始した時代、ソビエトはルイセンコ(獲得形質の遺伝をベースにした農業改革を実施した悪名高い生物学者)が全盛期であり、進化実験などやるものならシベリアに飛ばされてしまうような状況だ(実際にシベリアで実験したのだが。笑)。 べリャーエフは毛皮の効率的な生産を建前にしてキツネの飼育実験を開始し、累代飼育を重ねた。そもそも家畜化進化は犬や牛でも長い時間かかりそうなので、基礎研究としてもリスキーな上、社会情勢も最悪。この最悪の状況下で、このリスキーな実験を開始する時点で、熱いストーリー間違いなしである。 本書は、生物学解説とドラマのバランスが素晴らしい。著者の一人リュドミラ・トルートはべリャーエフの教え子で、彼亡き後にプロジェクトリーダーになった研究者である。後半は主にリュドミラとキツネの関係や、世代を重ねるごとに変化するキツネが物語の中心である。べリャーエフは、実験の立ち上げ後はプロジェクトリーダーとしてロビー活動が増え、現場は主にリュドミラとアシスタントが中心になる。。 さらに、社会情勢の変化に伴い何度も存続の危機に立ちながらも、実験を継続する様子は読みごたえがある。 家畜化実験に加え、国際学会の開催など、ルイセンコによって地に落ちたロシアの遺伝学を国際レベルに戻したべリャーエフの男気?胆力?には心惹かれるものがある。また、べリャーエフ亡き後、次々に明らかになる家畜化進化の遺伝的メカニズムは、べリャーエフが実験当初に予測したものと合致しており、科学的洞察力の高さにも脱帽だ。 そのほかの見所は口絵のキツネが美しく可愛いとこだろうか。 「絶滅の時代」に抗って――愛しき野獣の守り手たち 野生動物保護の黎明期から現代にかけて活躍?大暴れ?した活動家や研究者についての伝記。各章に1、2名主人公が登場し、自然保護・生態系保全についての信念や活動が綴られる。 序章はリンネが主人公。生物...