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引用されると嬉しいんです

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研究者ならば論文が出版されるととても嬉しい。出版された論文が引用されるとちょっと嬉しい。これまでに引用されて嬉しかったことを振り返る。 1)有名誌の論文に引用される 数年前にScience論文に引用された。セミ幼虫を捕食する動物の生態についての地味な内容だったのでびっくりしたが、Scienceに載ってたのが素数ゼミと鳥の相互作用の論文だったので納得。 2)憧れの研究者から引用される 自分が憧れている研究者から去年出版したレビュー論文を引用されることがあった。個人として認識されているかはわからんけど、少しでも影響を与えれているのかな〜とすごい嬉しい。 3)憧れの研究者と並んで引用される 最近、David WardleやOz Schmitzなどの論文と同じ箇所で引用されているのを見つけた。ちょっと鼻が高い気分だ。 Schmitzと一緒に引用(Ribeiro et al. 2026) Wardleと一緒に引用(Ribeiro et al. 2026) 4)具体的な内容を紹介される ちゃんと自分の論文を読んでくれていること、自分の論文のおかげでこの部分が成立しているんだと実感できることが嬉しい。 カラスとシカの相互作用について紹介される(Mikula et al. 2026) まだ100件くらいしか引用されていないので毎回被引用箇所を確認しているが、たくさんになってくると段々確認しなくなるんだろうか。ヒグマ論文の引用はなかなか伸びないけど。。。

育休中に考えた研究と仕事、老後のこと

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(男女共同参画推進室 しあわせぶんたん、に掲載された記事を許可を得て転載) (以下原文) 2025年3月から10月にかけて育児休業を取得しました。 現在は復職して育児に加えて授業やゼミ運営に追われる忙しい日々を送っています。 7ヶ月の育休は本当にあっという間でした。想像を絶する育児の大変さや、妻と息子の3人でのんびりと過ごす(注釈:本当は寝不足で倒れていただけですが)幸せな時間を満喫できました。 息子の寝顔(写真参照)や笑顔、泣き顔や変顔でさえ、全てが愛おしくて、育児の疲れを吹き飛ばしてくれます。写真フォルダの容量が一杯になって課金するか悩んでいます。 息子の誕生以来、おむつのメーカー決めや離乳食、保活まで、ありとあらゆることを妻と話し合いながら(時に喧嘩しながら)、手探りで育児を進めています。育休のおかげで、復帰後も2人で意見をぶつけ合いながら育児に励むことができていますし、今後もこの関係が続くでしょう。 育休を通して研究者を引退した老後の不安が一つなくなりました。大学院時代から研究活動が常に生活の中心にあったため、それ以外の活動に専念するのは初めてでした。私は多趣味ですが、趣味の時間も頭の中ではいつも研究のことを考えている、いわゆる仕事人間でした。研究者は仕事人間が多いので、そうした自分に何の疑問も抱かずに生きてきました。育休を取る際、研究ができないストレスでどうにかなってしまうのではないかと心配していましたが、意外にも育児と家事が中心の生活に満足しており、育児と大学業務の板挟みで研究できない現在も幸せに過ごせています。これからの人生の中で研究ができなくなるタイミングは必ず訪れます。定年退職前でも病気や怪我、介護、大学業務の都合などで研究を諦める時が来るかもしれません。そういう時に果たして自分は幸せでいられるか自信がありませんでした。31歳の私にとって時期尚早ですが、育休の経験を通して、研究者を辞めた後も幸せに生きていける確信を持つことができました。この育休期間は、息子の成長を妻と共に見守るかけがえのない思い出になっただけでなく、なぜか老後の不安解消にもつながりました。 保育園に入園したら息子と過ごす時間が減り寂しいですが、研究活動と家庭生活のバランスをとりながら幸せな人生を歩んでいこうと思います。

受賞講演で何を話すか?

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今年度の生態学会で若手奨励賞(鈴木賞)を受賞した。受賞者は大会で記念講演をするのだが、内容は研究自体の話、裏話、キャリアの話、関係ない話など各人で違っていて面白い。 私の受賞講演では研究を始めたパーソナルな経緯や何を考えてきたか、など研究の裏側を話した。講演のシナリオを練る際に、自分のこれまでの研究を1本のストーリーにするとどうなるのかをよく考えてみた。 メモ、最近PCから離れて手書きで研究を考えることが増えた。 余計な情報が入らないのでおすすめ。お気に入りのノートとペンで 上のメモは夜の10分間くらいでスラスラと書いた。これまでの私の研究は「学生サークル→指導教員の気まぐれ→テーマ探し迷走→フィールドで頑張る→論文を頑張る」というパーソナルなストーリーとして綺麗にまとめることができた。改めて私のキャリア初期は研究背景がないことを実感した。式典で読み上げられた受賞理由も「富田氏は****で粘り強く取り組み、***で粘り強く」と自然薯並みの粘りを見せたことが評価されており、講演内容とマッチしていた。自他ともに私の研究はパーソナルストーリーとして語るのが向いているということなのだろう。(最近スマートな研究者ぽいと自惚れてたが、まあ泥臭いんですね。) 受賞講演をどう使うかは、受賞者次第だ。自分の研究を知ってもらいたい・共同研究に発展させたい・就職に向けた演説・聴衆への問いかけなど様々である。いずれにせよ、今回の受賞はこれまでの研究道を振り返る良い機会だったし、定期的に応募していきたい。

育児雑感:父親と母親の表象

夫婦で外を出歩いていると良く「奥さん、大変でしょうけど、赤ちゃん可愛いから頑張ってね〜」と妻が応援される。 一方で、自分が育休中で育児に専念していることを妻が紹介したり私がいうと、「旦那さん、えらいね」「旦那さん、優しいね」と言われる。頑張ってるアピールっぽくなるので、育休中なのは身近な人以外には言わないようにしているが、話の流れ的に言ってしまうと褒められてしまう。その時、妻は「奥さん、ありがたいね、助かるね」と言われる。 しかし、私が育児しているのは偉くも優しくもないことだし、育児が大変なのは妻も私も同様である(出産と産後直後は妻の方が身体的に大変だが)。むしろ、睡眠時間が私より長かった妻の方が夜間授乳を頑張ってるし、3時間おきに20分以上キツい体勢で授乳するのは優しいしエラい👏 さらに、授乳を頑張る妻に対して「ありがたい、助かる」という感謝を常に抱いているが、そういう気持ちにはあまり注目されないようだ。 母親が授乳するのは自然であって、優しさとしては認識されない。優しくないとこんな頻繁に授乳とかできないけど。お母さんになると、母性が自然に生まれ授乳中はオキシトシンが出て幸福感に包まれるという話があるが、オキシトシン=幸福ではないし、母性味も個人差はあるだろう。 この場合、どういった言葉が妥当なのだろうか? 「奥さん、旦那さん、育児は大変だね。赤ちゃん可愛いから頑張ってね〜」「奥さんも旦那さんも大変な育児をして偉いわね。」とか一緒くたに褒められると嬉しいかも。 「授乳頑張っている奥さんに感謝しなさいよ、あなた」とか言われたらもっと嬉しいかも。 まあ、すれ違いの人に自分達を理解してもらおうと思うこと自体が無理で傲慢なので、これは内省なのだけど。 このような無意識のバイアスを感じたことがなかったので、新鮮味があって面白かったのでわざわざ書き起こしてみた。息子が大きくなる頃には我々が👴になっているので、父母像はどうなっているのだろうか?意外と昭和的な「母の表象」が残っているのだろうか?それはそれで興味深いし、考えや価値観の多様性という点で悪いことではないと思う。 ーーーーーーーーーーーー 高齢化著しい高知だと、話しかけてくる人は基本オーバー50、母親ワンオペ時代の方が多いからこうなる。年配はとてもフレンドリー? そして誰も悪気なんてないし、正直我々も労ってもらったり...

育児休暇前半戦を振り返る:育児編

 2025年3月上旬に第一子が誕生し、9月末まで7ヶ月間育休を取得している。前半戦が終わったので、育児や育休について感想をまとめてみる。というかやっと振り返る余裕ができたという。。。 ポストが長くなったため、育児編と研究編2本立てでお送りしま〜す 新生児は鬼大変👹👶 当然育児は初めてであり、生まれてきた赤子をどのように育てていいか分からないことだらけである。特に最初期は大変、首グラグラ・すぐに吐く・情緒が全く不明・授乳中に寝る・3時間ごとに起きない・沐浴etc... 親が不慣れな育児に取り組むことに加え、新生児期特有の不安定さによって、生後4週間(育児開始3週間)は特に大変だった。2人メインで1週間だけ私の父が手伝ってくれたので、ワンオペよりは遥かに楽なはずだが、心身ともに限界に近い状態で1ヶ月を過ごした。 妻とは「うちらの親は家事と育児を1人でこなしてたのか?しかも2人目以降は幼児の面倒もみてたのか??」とワンオペで子育てしてきた自分たちの親が、実は人間やめていたのではないかと、何度も真剣に議論したくらいだ。妻は出産ダメージ(鼻からスイカが出るようなものと例えられるが)により最初の1ヶ月は家事はほとんどできないので、私が授乳のサポートと家事を担当して、妻は授乳に専念する体制だった。 特に夜間の授乳は大変で、3時間おきに母乳とミルクを与える必要があり、しかも赤子👶が起きない!いやお腹空いたら泣いて知らせてよ〜と思うが、赤子というのは生後3週間くらいは自分がまだ子宮にいるつもりらしい。うちのは予定3週間前に生まれたから、余計に子宮モードが強かったかも。 夜の戦いを終えた我々は、日中は死に体(相撲用語)、昼飯は基本インスタント。夜は頑張って何か作ったが記憶がない。母乳成分とか気にしている余裕は全くない。日中はずっとドビュッシーの月の光をリピート再生してぐったりしていた。 授乳のサポートとミルクを担当しており、3時間おきに授乳だが、オムツや寝かしつけなど入れて毎回1時間以上は起きていた。つまり実質2時間以下の睡眠を3時間おきにとっており、夜は断続で合計4時間くらいしか寝れてなかった。 一番こたえたのは、2週間検診で体重増加が悪いからもっと授乳を頑張れと言われたことであり、かなり努力しているつもりだったが、まだやるんか〜と少し絶望した。 赤子が可愛くなかったら...

2023年、2024年に高知県外・国外で出会った魚

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海外や県外の魚の紹介。 和歌山のクジラの内蔵 鯨類食文化がある和歌山のある街で、ウデモノという名前で売られていた。スーパーで写真撮ろうとしたら店員に怒られた。実は愛護団体に攻撃されたことがあるらしく、撮影などは禁止されているようだ。複雑な気持ちになった。写真はアップしないことに。味は美味しい。あっさりしたホルモン。 伊根のブリ 京都の日本海側の観光地の伊根の舟屋の食堂で食べた、めちゃくちゃ美味しかった。冬の日本海側のブリはどこも最高だ。ブランド化している鰤らしいがもっと有名になってほしい。 インドネシア・スマトラで見つけた魚 市場では、回遊魚ぽいのが多かった。ギンガメアジぽいやつや、鰹マグロなど。衛生的に生食は危険だ。期待していた面白い魚は意外と少ない。 マグロ ロウニンあじ? 楽しげな市場の雰囲気。 スマトラの食堂 食堂では川魚が多い。ティラピアやナマズなど。養殖池の様子を見てしまうと、ちょっと怖いが、気にせず食べると美味しい。特にナマズは脂と皮のパリッと加減がウナギぽくて美味しかった。 ナマズフライ。超美味しかった。 ティラぴあのカレー煮込み。 Snapperと書いてあったので、フエダイ? アラスカのスーパー 国際学会で行ったアラスカで売ってた魚は、オヒョウ、タラ、サーモン。レストランでも食えるが高すぎて無理だった。結局アラスカでは魚は全く食べなかった。 知人がドミトリーのグリルでキングサーモンを焼いたらしいが、最高だと言ってた。羨ましい。。。

2023・2024年に高知で食べた魚

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 2023年と比べて24年は魚探訪してないので、2年分まとめて紹介。2022年版は こちら コバンザメ コバンザメは四万十市や土佐清水市の魚屋で時々見た。一度購入したが、滑りがすごく処理しにくい割に味がとても普通。普通の白身フィレのような味で面白くないので、一度だけ購入。 ニザダイ・ウミヒゴイに挟まれたコバンザメ。 ニザダイは美味しかったよ コバンザメを買ったら、まずはこれをやりますよね。 買わなかったけど別種クロコバン? コバンザメ2種が売っている魚屋、すごい。 ヘラヤガラ 土佐清水で購入。 2022年のポスト で紹介したアカヤガラの親戚。少しずんぐりしている。食したにも関わらず、味は不明だ。答えは2枚目の写真にある。小骨が複雑すぎて、ほとんど味を食べれなかったのだ。これはすり身にすればよかったのか?10円で売られていたわけだ。 アカヤガラよりも口が短い、 お腹に黒い点々がある なぜ皮から骨が突き出てくるんだい? クロシビカマス 室戸の有名な魚屋で見つけた、未利用魚。ウケという地域名で売られていた。10匹くらいで200円くらい。以前はイトヒキアジが同じような感じで売っていた。刺身もムニエルもとても美味しい。太刀魚に似ている。黒くて生食は抵抗あるが、上品なので見つけたら刺身で食べてみよう。 小さくも黒銀の光を放つ奴ら ムニエルは美味しい。カマスよりも太刀魚だね。 スギ 土佐清水で購入。この魚はパッと見コバンザメだが、スギ科スギ属の全然違う魚だ。最大1.5mくらいになるそうだが、こいつは50cmくらい。脂のり身質が良いため熱帯や沖縄では養殖されることもあるようだ。確かに脂ノリがよく美味しかった。捌きやすさもポテンシャル高いだろう。見た目のおかげで本州では安く入手できるだろうが、今後市民権を得ていくと高くなるかも。 スギ。小判鮫に似てるが吸盤はない ザケラ(クロサギ) 宿毛の産直市で5尾130円で購入。カイワリなどと同じ扱いの魚。愛南ではバケラと呼ばれるらしいが、こっちではザケラである。刺身と塩焼き、煮付けにしたが、味・食感いずれも良く、値段も考えると日常的に食べていきたい魚である。たくさん売っていたが高知市に流通しないのは、足が早いからなのか?この産直市はミノカサゴが売っていたり未利用魚の宝庫で注目している。 口が窄んでいるが、下に伸びるらしくそれが名前の由来...

2024年に読んで面白かった訳本

 2024年に読んだ訳本のうち、特に面白かったものを紹介。 キツネを飼いならす: 知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語 ロシアで進められてきたキツネの家畜化実験についての物語。シベリアのキツネの家畜化実験は、進化生物学の最も有名な研究だが、その背景はとてもドラマチックだ。この実験は、冷戦化のソビエトで、タイトルにある「知られざる生物学者」ことドミトリ・べリャーエフによって始められた。実験を開始した時代、ソビエトはルイセンコ(獲得形質の遺伝をベースにした農業改革を実施した悪名高い生物学者)が全盛期であり、進化実験などやるものならシベリアに飛ばされてしまうような状況だ(実際にシベリアで実験したのだが。笑)。 べリャーエフは毛皮の効率的な生産を建前にしてキツネの飼育実験を開始し、累代飼育を重ねた。そもそも家畜化進化は犬や牛でも長い時間かかりそうなので、基礎研究としてもリスキーな上、社会情勢も最悪。この最悪の状況下で、このリスキーな実験を開始する時点で、熱いストーリー間違いなしである。 本書は、生物学解説とドラマのバランスが素晴らしい。著者の一人リュドミラ・トルートはべリャーエフの教え子で、彼亡き後にプロジェクトリーダーになった研究者である。後半は主にリュドミラとキツネの関係や、世代を重ねるごとに変化するキツネが物語の中心である。べリャーエフは、実験の立ち上げ後はプロジェクトリーダーとしてロビー活動が増え、現場は主にリュドミラとアシスタントが中心になる。。 さらに、社会情勢の変化に伴い何度も存続の危機に立ちながらも、実験を継続する様子は読みごたえがある。 家畜化実験に加え、国際学会の開催など、ルイセンコによって地に落ちたロシアの遺伝学を国際レベルに戻したべリャーエフの男気?胆力?には心惹かれるものがある。また、べリャーエフ亡き後、次々に明らかになる家畜化進化の遺伝的メカニズムは、べリャーエフが実験当初に予測したものと合致しており、科学的洞察力の高さにも脱帽だ。 そのほかの見所は口絵のキツネが美しく可愛いとこだろうか。 「絶滅の時代」に抗って――愛しき野獣の守り手たち 野生動物保護の黎明期から現代にかけて活躍?大暴れ?した活動家や研究者についての伝記。各章に1、2名主人公が登場し、自然保護・生態系保全についての信念や活動が綴られる。 序章はリンネが主人公。生物...

感想「大学改革〜自立するドイツ、つまずく日本」

本書は、大学の法人化の狙いと現状をドイツと比べることで議論している。感想というかメモを以下に書く。紹介は別ポスト。 法人化によって大学が国の統制化に置かれ、予算を減らされたと思っていたが、法人化は予算と関係ないし、国の統制も本来であれば弱く(間接的に)なるということに最も驚いた。 法人化は、大学の自律と研究教育の活性化を狙っていたにもかかわらず、自律が進まなかったことで、制約のある条件下での歪な競争が発生し、現在の大学間格差が生まれたらしい。税金の使い道が厳しく市民に審査される現代社会で、象牙の塔であったかつての大学が許されるとは思えないので、法人化は必然であった。日本の場合、大学が政府に提出する中期計画が細かすぎることで、窮屈さを感じるようだ。 結局ドイツが緩やかな管理でうまくいくのは、研究者レベルが高い点と大学と政府の信頼関係が日本ほど悪くない点だと説明されていた。これらは元を辿ると、ドイツと日本の高等教育の歴史の違いによるのではないかと考える。ハイデルベルグ大学・ケルン大学は14世紀に設立されているが、東大は19世紀である。日本では、大学ができるまでは研究は民間が中心であったため、大学の自律運営や研究レベル、政府との信頼関係に違いがあるのはしょうがないと思った。 また、日本の大学が統制されながら競争を強いられている点は、競争・市場主義的な性質を大学に求めるのはアメリカの影響があるのかもしれない。計画の審査などが世界で類を見ないほど細かいのは、日本人的性質なのか? 現在大学が強いられているのは国からの資金調達であるので、特定テーマでどうにかして金を取るしかない。結果、大学間の個性が弱くなっている印象がある。4章で論じられていた画一化された大学間競争の結果、大学の個性が弱まるというのは現場で働く身として実感している。農学部の最近の流行はDSDXによる効率化だが、地方大の多くが同時に力を入れ始めている。 自分もDX枠で採用され、担当授業のほとんどはDX関係である。野生動物研究は人気の割に学べる大学が少ないため、専門を押した方が大学の人気に繋がりそうだが、残念ながらDX関係の授業が忙しいので、野生動物関係の教育はあまりできていない。 ちなみに高知・愛媛・香川・徳島大学の中期目標を比べると、地域連携・国際化など似ている点が多い。国から与えられた宿題に答えんとする大学の様...

紹介「大学改革〜自立するドイツ、つまずく日本」

大学改革 自立するドイツ、つまずく日本、竹中 亨、2024、中公新書 https://amzn.asia/d/coIz4v0 2004年の法人化以降、財政難、 研究・教育の自由度や時間が下がったことで、 日本の大学の 研究力が弱っていることが指摘されている。本書は、法人化20年という節目に、その真の目的、理論的な背景をドイツと比べながら論じている。 *注意 本書は、あくまで法人化の理論的な建前や背景を中心に論じており、予算・人員削減、研究時間減少など、法人化によって実際に国立大学に起こったことについては触れていない。そのため、本書を通して法人化による国立大学の窮状や問題点を知りたい人はもっと直接的な本を読むといいだろう。 限界の国立大学——法人化20年、何が最高学府を劣化させるのか? 、2024、朝日新書 https://amzn.asia/d/d1FhFjw (この本もネガティブな面を強調しすぎな気もするが。。。) 最近就職した自分なんかは、金が豊かな時代を知らないし、予算は自分で取ってくるのが当然だと思うので、そこまで苦しく思わないが。。。 ーーーーーー 1章では、近年の数値目標重視傾向について紹介される。日本の国立大学は、6年間を単位として、かなり細かく記載された中期計画、中期目標を国に提出することで予算を調達している。客観的に評価するために、具体的な数値を立てる必要があり、これを評価するのが法人評価である。法人評価も相当な労力をかけて実施している。業績や社会貢献などについて多数の指標によって大学ごとに評価されている。評価は、大学教員など1000人近く動員されるほど大規模である。また、社会インパクトも指標に加えられており、教員はポイントを稼げる地域貢献事業に取り組んでいる。 一方で、ドイツではこうした数値目標はほとんど設定しておらず、ある州では、研究=外部資金額(45%)、教育=修了生数(45%)、共同参画=女性教授数(10%)だけらしい。法人評価に相当するものはない。 大学の取り組みを評価する際に、そもそも数値目標は難しいし、多くの研究者も同意している。にもかかわらず数値偏重なのは、政府がEBPM(Evidence Based Policy Making)の考えに則っているためである。また、数値を示すことでメリハリを付けようとする狙いもある。その割に、法人評...

レビュー論文が受理されるまでの道のり

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12月20日に自身初のレビュー論文が受理された。若い時代にレビューを書くことが目標だったので嬉しい 10.1016/j.tree.2024.12.011 画質が荒い この論文が受理されるまでの経緯を紹介したい。 学会での集会開催→国際学会で共同研究者発見→論文執筆という流れは典型的かもしれないが、色々と良い経験ができたので、長文だが紹介する。 2022年3月:生態学会での自由集会 2022年の生態学会で「 地上部と地下部の相互作用における動物の役割 」という自由集会を企画した。トピックはお気に入りの地上ー地下相互作用。学部時代に読んだ「地上と地下のつながりの生態学(深澤ほか訳)」という本に影響され、興味を抱いていた。 集会の目標は「議論内容に基づき総説を書く」。雑誌名を聞かれた際には迷わず、Trends in Ecology Evolution (TREE)と答える。共同企画者に目標は高い方が良いと言われたからである。 オンラインだったが90人くらい参加、各発表者も興味深い研究を紹介してくれた。自分からは分野の概観を紹介した。オンライン懇親会では、1時間くらい総説のアイデアをぼんやりと議論した。 集会後の議論だけで論文になる程具体的な話し合いができなかったのと、大学にポストを得たのもあって、しばらく寝かせることに。教員1年目は暇だったので、ボチボチ書いていたがまとまる気配はなかった。 2023年7月:国際学会での出会い 2023年にアラスカで開催された国際哺乳類学会IMCに参加した。初の国際学会だったが、ポスターの持ち運びがめんどくさくて、口頭発表することにした。 哺乳類を対象にした群集生態学のセッションで発表した。トップバッターだったが、朝早いのもあり30人くらいしか聴衆がいなかった。"Have you ever eaten insects?"と質問してみるも、あまり笑いを取れず。。。司会者は苦笑いしてた。 自分の後に、「永久凍土の融解によってネズミの生食・腐食食物網への依存度が変わる」という発表があった。「これは地上地下相互作用だ!、しかも哺乳類!」と激アツだったので、セッションが終わった後に発表者に突撃して、質問したり色々議論した。そこで連絡先を交換。 自分の研究にも興味があったらしくたくさん質問してくれた。同じセッションの者同士、お互いの...

研究者ネームの変遷

学生時代:Kanji Tomita 結婚後:Kanji M. Tomita  改姓したのでハイフンで繋げるかどうか考えた末に、ミドルネームに新姓を入れることに。ミドルネーム自体は、旧姓などをつけることが多いらしいけど 2024年10月〜:Kanzi M. Tomita 実は名前の由来が天才ボノボのカンジである。彼はKanziと表記されていることに最近気づいたので論文内の名前をKanziにしようという思いつき。論文的にはTomitaとしか扱われないし、イニシャル変わらないから良いだろう。 この場合、カンジというよりカンヅィとなるようだ。ちなみにKanziはスワヒリ語で「埋もれた宝」を意味するらしい。流石にこれ以降は変わらない気がする。

ファクトチェック!:ゴールデンカムイのヒグマ

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(「子育てネットワークさが」にのった記事を許可を得て転載) 最近、漫画ゴールデンカムイの人気と実写化によって、アイヌ文化への関心が高まっています。ヒグマも再三登場し、いいアクセント?になっています。ゴールデンカムイはかなり過激でクセの強い作品ですが、アイヌ文化や北海道の自然の説明はとても正確なので、漫画を読みながらアイヌや北海道について勉強になります。 今回は、ゴールデンカムイに出てくるヒグマの生態やアイヌとの関係について幾つか取り上げて解説したいと思います。ネタバレになるので、関係するヒグマのシーンのみを取り上げストーリーについては触れませんが、ネタバレ嫌な方は原作を読んでから、スクロールしてください。 獲物を雪に埋める(1巻1話) ヒグマに襲われた刺青囚人が内臓を喰われて雪に埋められています。 ヒグマは自分の獲物を一度に食べ切らずに、土や雪に埋めて時間をかけて消費します。恐ろしいですが、リスによるドングリ貯食のようなものです。こうした状態を土饅頭と呼びます。この習性はツキノワグマとアメリカクロクマでも見られます。埋めることで死体を食べる他の動物から見つかりにくくするメリットがあります。 埋められた囚人の死体を杉本が掘り出したことで、そのヒグマが取り戻しにきます。ヒグマは獲物への執着が強いので、土饅頭にイタズラすると攻撃されることがあります。自分のサークルでも、エゾシカの死体を見つけたら近づかないことを徹底していました。 有名なヒグマの人身事故はこの執着心が原因とされています。最大の獣害として有名な三毛別ヒグマ事件では、一人目の被害者を掘り出して埋葬したことで、ヒグマが死体を取り戻しにきたと言われています。 日高山脈で起こった福岡大学のワンゲル襲撃事件では、一度ヒグマが奪ったザックを取り戻したことで、執着的な攻撃に変わったそうです。今はこうした習性は有名になり、ヒグマに奪われたモノを取り戻すのは危険だと周知されていますが、当時はそんな知識はなかったでしょう。 埋められた囚人 (野田サトル、ゴールデンカムイ1巻1話) 穴持たずのヒグマ(マタカリプ)(1巻1話) 冬眠せずに冬も徘徊するヒグマを「穴持たず」と呼びます。穴持たずの生態はよくわかっていませんが、気性が荒くなっていると言われています。ヒグマを題材にしたアニマルパニック小説「シャトゥーン:ヒグマの森」でも凶暴化...

観察・実験・数理モデル

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最近、植物の繁殖生態学を調べている。動物も面白いけど、自然史的視点で調べるなら、予想外の生き様を見せてくれる植物の方が面白いと思っている。 両性花をつける、ある昆虫媒の植物において、雄花が雌花の先に出てくる(雄性成熟)程度によってどれだけ結実率が変わるのか、という植物生態学的に基本的な問いを立てて、予察的データを取った。 開花期のある期間に150個体をマーキングし、その時点の性別を調べる。 その際に、すでにメス化している個体と、まだオスの個体を記録する。 その意味では雄性成熟というより、早くメスに変わる効果を見ている? 結実期に、結実状況を調べる。 結果、左がメス化している個体、右がオスの個体 カテゴリは見た目から判断した成功の指標。 緑と紫が失敗、赤と青が成功 すでにメスになっている、つまり雄性成熟した個体とそれ以外では繁殖状況に特に違いがなさそうという結果が得られた。 雄性成熟した花は、他よりも先にメスになるので、周りのオスから花粉をうまく受け取れるのではないかと予測していたが、繁殖状況は変わらなさそうだった。 花粉親になれりやすいのは雄のままの花なので、先にメスになった方がいいとは限らない。 直感と反する結果になったのは何故か? 全体の性比を見ていないので、マークした個体以外のフェノロジーがズレており、花粉を受け取れた。 他のパッチから花粉が運ばれてきた。 1個の雄花が複数の雌花と受粉した(虫媒なのであり得る)。 自殖した。 調査の直前はすべての花がまだオスだった(何らかの理由で半数が一気にメス化した) 直感的には、予測通りにいきそうだが、これらの理由によって影響がなさそうな結果になった。 さて今年はどうしよう? これらを一つ一つ検証する? 別の問いを立て、また調べる? 生活史研究は沼るな。。。楽しいけど 何を言いたいかというと・・・・ これまで野外観察データを使って研究してきたが、かなり大規模な(派手な?)動物の行動を対象にしてきたため、観察だけで生態的な意味をきちんと考察できていた。 こうした経験から、私は実験や数理モデルによって研究する意味が分かっていなかった。なぜ非現実的な条件や仮定を作らないと見れないような現象をわざわざ検出するのか? 特に、実データがない状況で組まれた実験や数理モデルって何の意味があるのだろうか?と思う時もあった。(数理や実験の予測...

スマトラでのカワウソ調査

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 2023年からスマトラ島の農村でコツメカワウソの調査を始めた。 大学院の指導教員から科研費のプロジェクトの分担者として誘われたことがきっかけ。 農村なので、ジャングルを分け入っての調査ではなく畦道を進んでカワウソの痕跡を探したり、自動カメラを仕掛けている。結果を論文にするのはもうしばらくかな。 パダンの街、東南アジアにしては人が少ない コツメカワウソ 田んぼのコツメカワウソの生態は人と関わりが深く、休憩用の小屋を溜めフン場として使っている。小屋にカメラを置くと、そこを使うカワウソや人が撮影される。元々は氾濫原や湿地など流れが緩やかな水域生息地を使っていたそうなので、田んぼは代替生息地として使われる。 絶滅危惧種だし、日本でもエキゾティックアニマルとして人気なので、実際の生息地に行くと密猟を促進してしまっている国の人間として残念な気持ちになる。人里に近く生息しているので、現地の皆さんの理解が得られたら密猟は防げるかもしれない。 農地景観。カワウソは小屋を使う 初期のイネ。日本と同じような雰囲気 ウンコ。タールふん? カメラで撮影されたこつめカワウソ   足跡 料理 パダンは伝統的なパダン料理が有名。店に着くと大量の皿を出される。とりあえず食べて、食後に空になったお皿を数えて精算する。中途半端に残ったやつは再度別の客に出されるようだ笑。味はめちゃくちゃおいしい。インドネシアの中でも一番美味しいらしい。辛いので食べすぎると腹を壊す。 熱帯といえばフルーツということだが、意外とシーズンがあるらしく2月はドリアンなくて、9月にやっと食えた。アボガドジュースがとても美味しいが、砂糖とチョコを抜くべき。甘すぎ。 豪華なパダン料理 市場のスパイス? 世界一美味しいと言われるルンダン ドリアン ココナッツと激甘バナナ 生物 熱帯といえば多種多様な生き物。残念ながら農村にはそこまで多様な生物はいない。大型動物はシベット、オオトカゲ、カワウソ、ヤマアラシ、レオパルドキャット(ベンガルヤマネコ?)などが生息している。インドに近いからそっちとの共通種が多そうなのも面白い。 調査後に、学生に大学演習林に案内してもらったが、森はさすが熱帯という生物相。テナガサルにもあって歌をきいた。 オオトカゲ ラン(デンドロビウム系?) アミガサタケ? ジャングル、 大きな棘のあるシダのような植物が...